仕事が忙しいという言い訳で、前回に会いにいってから、ずいぶんと時間が経ってしまった。
フルーツが食べたいと言っていたので、持っていくことにして、
私は母親が入所している老人ホームに行った。
「お母さまは、食堂にいらっしゃいますよ」
受付でそう言われたので、食堂へ向かって歩く。
そこには小さくなった母親がいた。
車椅子に座り、食卓テーブルの上に手を置いたまま。
下を向いて、自分のお腹でも見ているのかと思うぐらいに、首が前に倒れ、
それが私の、とっても小さくなっていた母だった。
こんなに小さくなって・・・。
心の底から、これは、後悔?悲しさ?自責?自己嫌悪?寂しさ?驚き?愛おしさ?ぜんぶが混ざった感情が、噴き上がってきそうだった。
声をかけると顔をあげ、こちらをキョトンと見ている。
「よぉ、久しぶりだね、元気してた?」
それでもキョトン顔は変わらない。
「まさひろ、わかる?」
やっぱり、キョトン顔は変わらない。
あぁ、わからないのだな・・・。
いろいろな感情が、心の底から込み上げてくる。
それが噴き出すのを、なんとか抑え込みながら、
母は、わからなくなることで、肩の荷がおりたのだ、と思うように自分に言い聞かせた。
すぐに買ってきたカットフルーツを机の上に出した。
「フルーツ持ってきたよ。食べる?」
母はうなづくと、自分の手でフォークでさして食べはじめる。
パクっと口に入れて、もぐもぐ。
「あまいねぇ・・・。おいしい」
母は、そう言いながら、たくさん食べてくれた。
ぶどうがフォークで刺せないらしく、私が刺してやると、口を開けている。
母に食べさせてあげながら、私の目から、ぽろっと涙が落ちた。
自分が泣いているとは思ってもいなかったのに、落ちた涙で、それに気づいた。
気づいたら、涙がぽろぽろ落ちてきて、困ってしまった。
私は、自分のことを説明するかどうか迷ってしまったが、やっぱり言うことにした。
私「息子さん、いるでしょ?」
母「むすこ? いたねぇ。覚えてるよ。私の子だもん」
私「息子さんね、しっかりやってるよ」
母「どうなった? どうなったの?」
急に、真剣な顔になって聞いてきた。
私「しっかりやってるよ。家族も出来てね、幸せに過ごしているよ」
母「ほんとー、あぁーーー、よかった・・・」
母の身体の緊張がゆるんだのが伝わってきた。
私は、正しいことをした。
どうして、そんな事を言ったのか、自分でもわからない。
だけど、やっと小さくても親孝行ができたと思った。
子供が幸せに過ごしてくれている。
どんな親でも、一番望んでいるものかも知れない。
私は思う。
その先が不幸なら成功なんてしなくてもいい。
しっかりと、幸せになること。
親はそれを望んでいる。
私達自身だって、それを望んでいる。
幸せになること。
55歳になって、それが、こんなに重要なことだと、やっと気づいた。
こんなこと、誰が読むかわからないブログに記すべきかどうか、わからないが、書きとめておきたかった。
