昔読んだ本のメモを見返していたら、ロバート・チャルディーニの『影響力の武器』が出てきた。
かなり有名な本です。
だから、読んだことがある人も多いはずです。
この本は、簡単に言えば「人はなぜYesと言ってしまうのか」という話を紹介しています。これを、「承認誘導」という手法だとか言う人もいる。
(調べたことがありますが、ちゃんと名前決まってないっぽい)
そもそも、人間というのは、脳を使わないように生きている。
常にあらゆる情報を集めて、理性的に合理的に計算して意思決定なんてしていない。そんなことをやっていたら脳が疲れてしまう。
だから、実は、ある条件が揃うと、かなり自動的に判断しているらしい
その代表的なものとして『影響力の武器』では、
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返報性
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コミットメントと一貫性
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社会的証明
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好意
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権威
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希少性
という6つの原理が紹介されています。
これが効くんですよ、まじで。
たとえば返報性なら、何かをしてもらったら、お返しをしなければならない気持ちになる心理です。
社会的証明なら、「みんなが選んでいる」と言われると、それなら間違いないだろうと思う心の動き。
希少性なら、「残り2個です」と言われた途端、さっきまでそれほど欲しくなかったものが急に気になったりする。
私も、「現品限りなんです!」とノートパソコンを衝動買いしたことあります。
防御のために「武器」を知る
この本の面白いところは、こういう人間心理を単なる心理学の話として説明するだけではなく、それを利用して人から承諾を引き出す人たちがいるから防御しましょうね、と防御の本という顔をしているところです。
相手がどんな「影響力の武器」を使っているのか分かれば、こちらも無防備にやられずに済みます。
そういう意味では、『影響力の武器』は防御の本として読むことができます。
なるほど。
確かにそうだと思います。おっしゃるとおり。
ただ、昔この本を読んだときのメモには、こんなことを書いていた。
「誰がこの本を読むかといえば、承認誘導で利益を得ようとする人でしょ。タイトルも、武器って書いちゃってるし・・・」
身も蓋もない(笑)。
私自身も、(たぶん誰も)防御するために読んでない。
防御の本のふりをした、攻撃の本でしょ
「こういう方法で人は動かされてしまいます。気をつけましょう」
と、非常に詳しく説明してくれています。
ところが営業やマーケティングをやっている人間がそれを読んだら、
「なるほど。そうすると人は動くのか」
となってしまいますよね。
防御法を教えているはずなのに、その説明があまりによくできているので、そのまま攻撃法の教科書になってしまいます。
考えてみれば、タイトルからして『影響力の武器』だもんねぇ。
「影響力から身を守る方法」ではないです。
もちろん、チャルディーニ本人が「これを使って人を操りましょう」と言ってはいません。
むしろ現在の彼の活動でも、こうした原理を倫理的に使うことを、明確に強調している。
それでも私は、
これは防御の本のふりをした、攻撃の本。
と思ってます。
そもそも、チャルディーニとは何者なのか
私は、ずっと前に、外資系補聴器メーカーさんに研修に行った時、
「あなたの研修内容は、チャルディーニに似てるわね。チャルディーニは当社の顧問ですよ」と言われたことがあるんです。
めちゃくちゃ光栄で、嬉しかった記憶があります。
だから、それ以来、著者のロバート・チャルディーニという人が気になってフォローしています。
チャルディーニは社会心理学者で、長年にわたって
「人はなぜ他人からの要求にYesと言うのか」を研究してきた人物です。
心理学とマーケティングの名誉教授でもあり、現在も「影響力の科学」の専門家として知られています。
面白いのは、『影響力の武器』が研究室の中だけで書かれた本ではないところ。
チャルディーニは、人からYesを引き出している、実際のビジネス現場にはいって、セールス、募金、広告など、実際に承諾を獲得している人たちの技法をフィールド調査しているんです。
ここが、この本が妙に実戦的な理由なのだろうと思います。
「理論上、人間にはこういう傾向があります」
だけではありません。
現実の世界で、
「どうやったら人はYesと言うのか」
をずっと観察していて、生々しい現場の知恵を知っています。
そして、そのバラバラに見えるテクニックの背後にある人間心理を整理しています。
だから営業をやっている人間が読むと、やたら使えるわけです。
武器は、武器なのだと思う
考えてみれば、これはチャルディーニに限った話ではありません。
人間について深く分かれば分かるほど、その知識は人を助けるためにも使えるし、人を動かすためにも使えます。
相手の心理を理解する。
相手が判断しやすいように伝える。
相手の背中を押す。
ここまでは普通の営業でもやっています。
でも、その少し先には、
相手がよく考えないようにする。
断りにくい状況をつくってしまう。
本人が自分で決めたと思うように誘導してしまう
という世界もあるんです。
ところが、この境界線は、結構むずかしいものだと思ってます。
包丁の使い方を詳しく説明した本を読んで、
「これは料理の本なのか、凶器の本なのか」
と議論しても仕方がありません。
防御にも使えるし、攻撃にも使えてしまう。
優れた知識であればあるほど、どちらにもよく効くんだろうと思います。
それにしても『影響力の武器』というタイトルは、良いタイトルだなと思う。
